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【絵本】「どんぶらどんぶら七福神」 みきつきみ文 柳原良平画 リズミカルな調子と笑顔が福を連れてくる

どんぶらどんぶら七福神

タイトル:どんぶらどんぶら七福神
文:   みきつきみ
画:   柳原良平
出版社: こぐま社
出版年: 2011年
文の量: 見開き2ページごとに5行程度
ページ数:全23ページ

こんな子にオススメ!
 3、4歳の繰り返し言葉の面白さに目覚めた子
 おじさん、おじいさんに興味がある子

 

リズミカルな言葉で七福神をユーモラスに紹介

 言葉遊びにあふれた文によって、七福神を紹介する絵本です。

柳原良平さんの描くキュートな七福神が、みきつきみさんによるリズミカルな紹介文と共に登場します。

 七福神に初めて親しむにはもってこいの絵本です。

 

あらすじ

「どんぶらどんぶら」という素敵にのんきなフレーズと共に登場した宝船。

船に乗っているのはもちろん!七福神の皆さんです。

ひとつ ひときわ えがおの 恵比寿さま

ふたつ ふっくり ほっこり 大黒天

といった調子で次々に、七福神が見開きで1人ずつお馴染みの小道具と共に登場します。

最後には七福神が全員集合して、鶴と亀、宝船にお日様までそろって、なんだかとってもめでたいめでたい。

 

子の反応

息子(当時3歳)がこの絵本を暗記するまでに好きでした。

図書館で借りてきて、あまりの偏愛っぷりに購入に至った絵本です。

音が面白かったようで、最初から順に朗々とご機嫌で声に出していました。

七福神の中では、毘沙門天と大黒天が彼のお気に入りでした。

理由は、「かっこいいおじさんだから」とのことです。*1

 

おすすめポイント

何といっても、七福神たちのハッピーな笑顔とリズミカルな文の調子です。

 

七福神ってちょっと謎な集団ですよね。お互いに共通の話題ってあるのかな。

おじさん(恵比寿、大黒)、おじいさん(福禄寿、寿老人)、太った人(布袋)、綺麗なお姉さん(弁財天)、いかつい軍人さん(毘沙門天)が同じ船に乗り合わせている。

そのごった煮集団で唯一共通しているのは、笑顔。

 彼らの肝は、笑顔によって福を連れてくる所なのだと思います。

 その重要な笑顔が、柳原良平さんの特徴的なイラストで非常に可愛く描かれています。

柳原良平さんは、あの「アンクルトリス」の生みの親です。

絵本では「かおかおどんなかお」が有名ですね。

彼の作品はシンプルな線で、顔や姿の特徴をしっかりとらえます。

この絵本の柳原さんによる七福神は、皆常に笑顔で正面を向いています。

 それによって、七福神という集団のハッピーさがとてもよく伝わってくるのです。

 

 

絵本の始まりの文は、

どんぶら どんぶら なみわけて

どんぶら どんぶら 宝船

あれに みえるは しちにんの

ふくの かみさま 七福神

となっています。どうですか?もう絵本に引き込まれますよね。

その後は、「ひとつ」「ふたつ」「みっつ」と数え歌のように七福神の紹介がスタートし、「とおだ とっても めでたいな」でフィナーレです。

さらに文章の中には「えんやらほ」だとか「とんとことん」「べんべらべんべん」などの、声に出したくなってしまうかけ声のように楽しい言葉がちりばめられています。

みきつきみさんは元々コピーライターとして活躍していた方なので、言葉選びがお上手なのかもしれません。

全ての文が講談師のような名調子で、つい先へ先へと読み進めたくなってしまうのです。

 

読み終わると何となくハッピーになってしまう、そして日本語の面白さに気づかせてくれる絵本として、「どんぶらどんぶら七福神」は自信をもっておすすめできます。

*1:

息子はおじさんという存在がなぜか非常に好きでした。

この絵本にドはまりしたのはそのせいもあったのかもしれません。スーパーやデパートでぼんやり座っている知らないおじさんの脇でもじもじしては、ちらちら憧れの視線を送っていました。しかし、悲しいかな一般的なおじさんたちは自分に幼児が興味を持つなどとはつゆほども思っていないので、常に彼の愛は一方通行でした。