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【絵本】「まぼろしのゆきのはらえき」間瀬なおかた作 電車も動物も人間も等しく慈しんで描く

うみやまてつどうまぼろしのゆきのはらえき 

タイトル:まぼろしのゆきのはらえき
作:   間瀬なおかた
出版社: チャイルド本社
出版年: 2011年
文の量: 見開き2ページごとに4~9行程度
ページ数:全32ページ

こんな子にオススメ!
 3~5歳の電車好きの子 
 動物が好きな子
 

人間ときつねの共存を電車を介して描く作品

間瀬なおかたさんは、電車絵本を読む子なら一度はお世話になっている作家さんだと思います。

間瀬さんの描く電車はいつも少し丸っこくて柔らかい雰囲気をまとっています。

 

こちらの絵本では、昔話によく出てくる化け狐が電車を好きになり人間を助けてくれる様を描いています。

 

 

あらすじ

うみとやまをつなぐうみやまてつどう。

今回の舞台はやまおくえきのてまえの「ひろのはら」です。

ここは、雪がふると「ゆきのはら」と呼ばれるようになります。

電車の停まる駅はないものの、うみやまてつどうの線路が横切っています。

このゆきのはらには、電車が大好きなきつねがいました。

きつねはよく電車が通りすぎるのをじっと見ていました。

 

ある夕方、ゆきのはらを横切り近道をしようとした男の人がいました。

しかし、吹雪がひどくなりついに彼は倒れてしまいます。

きつねは何とか男の人を助けようとしますが、力が足りません。

 

そこへうみやまてつどうの電車が通りかかりました。

きつねは一計を案じて、じゅもんをとなえます。

すると、何もなかった所に「ゆきのはらえき」があらわれ、きつねは駅長さんとして電車に「トマレ」の合図を送ります。

 

 

子供の反応

 息子(当時5歳)、娘(当時2歳)がそれぞれドはまりしていました。

正直そこまで盛り上がりが感じられる絵本ではないのですが、なぜか何度も何度も「読んで」と持って来ました。

お話としての起承転結がきっちりしているからか、最初から最後までじっと集中して聞いていました。

読み終わると「ほうっ」と息をついたりするので、こちらにも1つのお話を聞き終わった満足感が伝わってきました。

 

 

おすすめポイント

きつねという自然界の生き物と電車という近代的な存在を結びつけて、両方を丁寧に描いている点です。

また、電車・人間・キツネを全て愛しいものとして平等に扱っており、それが絵本全体の優しい雰囲気を形作っています。

 

 

ゆきのはらには、きつねが すんでいます。

この きつねは てつどうが だいすきです。 

 この導入部から「え?電車の好きなキツネ??」と子供はぐっと引き込まれます。

 電車好きな子の興味を惹きつつ、化けぎつねというテーマを展開していきます。

ここでは、しかけ絵本のおりたたみページが非常に効果的に使われています。

印を結んだきつねのページを開くと、下からきつね駅長と駅が表れます。

そしてきつね駅長が電車を見送るページは、開くとただのきつねが電車を見送ってる絵になります。

このしかけページのおかげできつねの化け始めと終わりが分かりやすくなっています。

 

 

おそらく間瀬さんは人間も動物も電車も全て平等に好きになれる方なのではないかと思います。3つの存在はそれほど生き生きと描かれているのです。

動物が人間を助けることがあってもいいし、電車を好きなきつねが居てもいいじゃないか、と言われているような気がします。

化けぎつねは、人を助けた後も駅員さんの呼びかけに応えてゆきのはら駅とセットで駅長さんとして現れます。

そしてお礼の油揚げをもらってからも、時々駅長さんとしての姿を見せてくれます。

こうしてファンタジーが日常の中で続いていく感じも興味深いです。

 

 

間瀬なおかたさんは、新幹線やローカル路線を優しいタッチで描いた「しんかんせんでいこう」や、うみやまてつどうの他のシリーズも大人気です。

電車以外にもバスや車などの乗り物絵本も数多く作っている作家さんです。

是非一度、間瀬さんのファンタジーな乗り物ワールドを味わってみてください。