【絵本】「おばけがぞろぞろ」ささきまき作 おばけがみんなでどこへいく?
作: ささきまき
出版社: 福音館書店
出版年: 1988年
文の量: 見開きに1、2行
ページ数:全24ページ
こんな子にオススメ!
ストーリー絵本に興味が出てきた子
おばけが好きな子
おばけがふえてく楽しさをストーリ絵本への入り口に
ささきまきさんが描くおばけ達が1人ずつ増えていく、というシンプルな絵本です。
登場するのは皆かわいいおばけ達なので、どんなに怖がりの子でも楽しめると思います。
文章の量も少なく擬態語が多いので、赤ちゃん絵本からストーリのある幼児絵本への移行期に最適です。
あらすじ
ある木のうろから「びろ~~ん」と出てきたのは、まるっこくて白いおばけのぞぞまるちゃん。
ぞぞまるちゃんが次に訪れたのは別のおばけの住む原っぱ。
「もものりくん あそびましょ」と呼ぶと足おばけ?のもものりくんが現れます。
そんな具合に個性的な造形のおばけ達が1人ずつ増えていって、最後には7匹(人?)にまでなります。
どんどん増えたおばけ達が最後に訪れるのは?
子供の反応
息子(当時1歳)に何度読んだか分かりません。
ぐずっていても一度読んであげるとちょっと気分が変わるお助け絵本でした。
娘(当時1歳)からも同じように「読んで」が多かったです。
「あそぼ」を「うん あそぼう」と受けて友達が増えていく、というシンプルな展開が良かったのだと思います。
「びろ~~ん」や「にゅーう」などのおばけ登場時の擬態語を丁寧に読むと、クスクス笑ってくれてこちらまで嬉しくなりました。
最後におばけ達が人間の男の子の所を訪れる場面の「しんごちゃん あそぼう!」というセリフを、息子や娘の名前にして「〇〇くん、〇〇ちゃん あそぼう!」と変えてよく読んでいました。
まだ字が読めない頃なので、絵本に本当にそう書いてあると思ったようでした。
その瞬間は、本当におばけが来るんじゃないかと何ともいえない顔になっていました。
おすすめポイント
まずは、出てくるおばけ達の造形が楽しい!
そして、子供がいずれ経験するであろう「あそぼ」→「うん あそぼう」の掛け合いをおばけ達がやってみせてくれる所も良い。
最後に、おばけ達が人間の家を訪れる展開によって、ファンタジーと日常をつなげてくれる点も素敵です。
おばけ達は、それぞれ好き勝手な造形をしています。
こどもって見慣れない変な形もおばけも大好きです。
足みたいなおばけ、こんぶみたいなおばけ、なんか体がぐるぐるしているおばけ。
彼らはそれぞれユニークな名前でユニークな場所から登場します。
それを追っていくだけで楽しい気持ちになることができます。
また、少しずつ他者に興味を持ってきた子供は、おばけ達の「あそぼ」「うん あそぼう」を通して友達との関わり方を少しだけ学ぶこともできます。
この絵本のおばけ達の掛け合いからは、相手に言葉をかけることで、相手と友達になり一緒に遊べるという子供のコミュニケーションの基本を感じ取ることができるのではないでしょうか。
そして、最後の部分で家という基本的に絶対安全な場所に、おばけ達が訪れることで子供は少しだけ不安な気持ちになります。
自分の世界には全くない異物が、突然自分の所にも来るかもしれないという展開は子供の想像力の広がりを促してくれます。
ファンタジーと日常をつなげるという意味ではこれ以上ないくらいのつなげ方だと思います。
ささきまきさんは、村上春樹の小説に提供した羊男などの挿し絵で有名ですが、絵本作家としても超一流の方です。
親しみやすいささきさんのやわらかいイラストによって成立する絵本は、いつも子供に少しだけ日常から離れた世界を見せてくれます。
「はぐ」や「ねむいねむいねずみ」、「ぶたのたね」など淡々としたユーモアと優しさにあふれた絵本はどれもおすすめです。