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【絵本】「コッコさんのおみせ」片山健作 ごっこ遊びの面白さと家族との関係性

コッコさんのおみせ (幼児絵本シリーズ)

タイトル:コッコさんのおみせ
作:   片山健
出版社: 福音館書店
出版年: 1995年
文の量: ページごとに5行程度
ページ数:全24ページ

こんな子にオススメ!
 ごっこ遊び、ままごと遊びにはまっている子 
 間違い探しが好きな子
 

こどものごっこ遊びと家族との関わりを描く

「コッコさんのおみせ」は、片山健さんによるコッコさんシリーズのうちの1作です。

この絵本では、こどもの作り出す遊びの世界の柔軟さ、こどもと家族との関わりがユーモラスに描かれています。

 

あらすじ

コッコさんはおみせを始めることにしました。

おかしやさん、くだものやさん、カレーやさんと様々なお店を開店してみるものの、なかなかお客さんが来てくれません。

そこでコッコさんは、お兄ちゃん、お父さん、お母さんを遊びに誘ってみることにします。

でも、みんな自分のことで忙しいようです。

そこでコッコさんは新たな試みをすることにしました。

 

子供の反応

息子は3歳、娘の場合は2歳の頃に最も「読んで」と持ってきた絵本です。

 

前半のコッコさんが作るお店がどんどん変化していく部分では、「あ、これはケーキだ」 とか、「これはサクランボ?」とコッコさんが身近なモノを何に見立てて遊んでいるのかを推測して楽しんでいました。

また、コッコさんと相棒のクマのぬいぐるみの扮装も少しずつ変わっていくので、「はちまきになったよ。」「コック帽、のつもりかな」などとそちらも気になっていました。

 

うちはコッコさんの家と同じ兄妹のきょうだい構成なので、兄を誘いに行ったりする場面も面白かったようです。

コッコさんのお兄ちゃんが一応ごっこ遊びに付き合ってくれる場面では、2人ともニヤニヤしていました。

 

おすすめポイント

「コッコさんのおみせ」は、こどものごっこ遊びの面白さを改めて教えてくれます。

また、ごっこ遊びと家族との関わりが自然体で描かれている点もいいなあと思います。

 

 

子供は、生活圏内にいる大人を興味深くじっと見ています。

幼稚園や保育園の先生、パン屋さん、歯医者さん、電車の車掌さんなどなど。

そして、家に帰ると、外での経験を反芻するように「ごっこ遊び」を始めます。

その際の細部に対するこだわりは、こちらが驚くほどで、「ハイこれが切符」「まだお店開いていないから待ってて」などとルールを色々決めて楽しんでいます。

レジ代わりの段ボールや頭に巻く鉢巻き用の布などはごっこ遊びの必需品です。

 

この絵本は、お店屋さんの細部まで丁寧に描いているため、コッコさんがいかにこだわりを持ってそれぞれのお店を作り上げたのかがよく伝わってきます。

いつもごっこ遊びをしている子供は、コッコさんの意図をきちんと受け止めて「これは〇〇のつもりなんだな」と見立てを推測して楽しむことができます。

 

 

また、ごっこ遊びというのは最初は1人で満足していても、だんだんお客さん役や患者さん役、もしくは敵役などの「他者」が欲しくなるのです。

その引き込もうとする対象は、家での場合は家族です。

でも家族は、大人も子供もそれぞれ何かしら自分のしたいことをしていて、ごっこ遊びに本腰を入れて付き合ってくれることはあまりありません。

毎回のごっこ遊びに付き合うのは日常の中ではなかなか難しいことなのです。

でも子供はあの手この手でごっこ遊びの世界を広げることで、他者を招き入れようと工夫します。

その家族と子供との距離の取り方もこの絵本には丁寧に描かれています。 

 

コッコさんの家族も別に全力でコッコさんに付き合うわけではありません。

それでも、コッコさんの遊びの世界を認めて接していることが伝わってきます。

「きちんと反応する」だけでも、子供は結構満足してまた1人の世界に戻っていったりするものです。

そういった家族の対応がこの絵本を暖かいものにしています。

 

 

子供は非日常を描いた絵本も好きですが、日常の中で終始する絵本というのも非常に好きです。

この絵本は、子供の遊びの世界を優しく丁寧に描いて日常の面白さに気づかせてくれます。

 

片山健さんのコッコさんシリーズは、この他に「おやすみなさいコッコさん」「コッコさんとあめふり」「コッコさんのともだち」が今でも入手可能です。

どれも子供の世界を暖かく描いている素敵な絵本です。